作品紹介 ~葛飾北斎:百物語・さらやしき~
こんにちは!サトツキです。
このブログでは、私の好きな美術作品、おすすめの美術館などアートについて
紹介していきます。
初めてで不慣れな部分もございますがお許しください。
さて、今回は作品紹介ですが、記念すべき第一回は、浮世絵をご紹介。
気になる方はぜひスクロールを。蒸し暑くなるこの時期にぴったりの一枚ですよー
(Ukiyoe-searchより)
今回ご紹介するのは、葛飾北斎作「百物語・さらやしき」です!
「皿屋敷」という名前は怪談で聞いたことがあるかもしれませんね。
しかしこの絵を見て、「オモッテタノトチガウ・・・」となった人も
多いのではないでしょうか?
おどろおどろしさmaxですが、クセの強さも目に付くこの絵、さっそく解説します!
1,「皿屋敷」のあらすじ
今回の浮世絵のベースになった皿屋敷伝説ですが、全国に似た話が伝わっています。
もうすでにあらすじをご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、
ここでざっくりとおさらいしておきましょう!
ある屋敷に、お菊という美人の使用人がいました。屋敷の主人はお菊にべたぼれ。
妾にしようと口説きますが、これがなかなか堕ちません。
ここで主人は一計を案じます。この家には家宝の10組の皿があるのですが、
これをお菊が管理しているのです。ならば・・・
「おい!皿がいちまいないぞぉ?どうしてくれるのじゃあ?」
「それは・・・」
「でものぉ、今夜ワシの寝床の世話をするならぁ、考えてやらんでもないぞぉ?」
NTRモノの常套sy
とういうわけで皿を1枚隠し、罪をお菊にかぶせたという次第です。
それでもなかなかなびかぬお菊。
業を煮やした主人はお菊を殺して井戸に捨ててしまいました。
その晩、井戸の底から「いちま~い、に~まい・・・」と皿を数えるお菊の声が。
9枚目まで数えたところで声が途切れ「いちまいたりぬ・・うらめしや・・・」
という声が聞こえたとき、屋敷の主人はすでに気がふれて死んでいたそうな。
以上が皿屋敷伝説のあらすじとなります。
2,ほかのお菊さんとの違いは?
さて、あらすじを見た皆さん、北斎の浮世絵と比べてみて、
何かひっかかることはないですか?
「あれ、お菊って首切られたっけ?」
と思った方、そうなんです!この浮世絵、
お菊の首がなく、そもそも人の形かも微妙です。
しかし、普通はそんなことはありません。下のイラストをご覧ください。
これはいらすとやの「お菊さんのイラスト」というフリー素材です。足こそないですが、ほとんど人型であるといっていいでしょう。ほかの絵でもお菊さんは似たような感じで描かれています。
このように、通常は人に近い形でお菊さんを書くのがセオリーです。したがって、首から皿が伸びている、といったような描き方はとてもレア!理由は未だはっきりとはしていません。北斎のセンス恐るべし。
後半で私の考察、というか妄想を書かせていただきたいと思います。
3,みどころ
さて、この「百物語 さらやしき」ですが、一番の魅力は何といっても構図と斬新さでしょう!葛飾北斎という浮世絵師は、構図を非常に重視しているのです。
描写の細かさや、お菊さんの独特な顔も見逃せませんが、やはり構図なくして北斎は語れません。
みなさんは「黄金比」というものををご存じですか?なんでも人間が一番美しく感じる構図なんだそうな。もちろん、江戸時代にそのようなことは知られていませんでした。
(黄金比の構図)
しかし、北斎の絵にはいたるところに黄金比が使用されているのです!
これは、黄金比の構図を今回の絵に当てはめてみたものですが、見事に当てはまっていますね!ほかにも、北斎の絵には黄金比が当てはまるものがたくさんあります。
また、もう一つ革新的な手法として、「化学染料の使用」があげられます。
北斎が生きていた当時、中国の清で化学染料の量産が成功し、それまで高価だった「ベロ藍」という化学染料が手軽に買えるようになりました。つまり、当時の流行の最先端。北斎と版元はそれをいち早く使用しています。
鮮やかさが特徴の「ベロ藍」。「富岳三十六景」ではさわやかな感じを演出していますが、今回の絵では不気味さを十二分に引き立てていますね!
4,私の見立て
ある程度見どころを紹介したところで、この浮世絵に対する見立てについて解説します!といっても、あくまで私の個人的な見解なので軽く読み流してください💦
まず首から下の独特のフォルムですが、これは蛇を表していると考えています。というのも、昔から蛇は怨念、執念の象徴と考えられてきました。
現に北斎も「しうねん」という浮世絵に蛇を描き入れています(下図)。「しうねん」を感じに直すと「執念」ですから、北斎を含めた当時の人々は、そういったイメージを蛇に持っていた、ということが推察されますね。
(Ukiyoe-searchより)
また、この「さらやしき」の井戸なのですが、これは木製となっています。木製の井戸は当時からあったのでおかしくはないのですが、このように桶のような形は珍しいかなーと思います。これもかなりのこじつけなのですが、私はこれ座棺ではないかと思っています。
座棺というのは、日本がまだ土葬を行っていたころの棺桶のことを指しています。
(下図)
形状もかなり似ていると思いませんか?死体の入った井戸を、棺桶そのものとして見立てていたとすると、北斎はかなり粋なセンスの持ち主だったかもしれませんね。
5,まとめ
ここまでいろいろなことを書いてきましたが、この「百物語 さらやしき」という絵の最大の魅力は「計算された斬新さ」だと思います!
これまでの記事から、”この構図がうける”、”この色を使えば人の目をひける”など、細部にまで工夫を凝らしていることがわかります。
これは、流行に常に目を光らせ、綿密に構成を練ってこそ初めて実現するといえるでしょう。北斎たちの影の努力がうかがい知れます。
また、あえてユニークな見た目にすることで見る人に創造の余地を残した、ということも考えられますね。
皆さんはこの絵、どう思いますか?気に入った方は、ぜひ深堀りしてみてくださいね!
6,この絵の主な所蔵館